「ジャーナリズム」と「数字というデータ」について。
とあるサイトに掲載されていた、
現在のサッカージャーナリズムを批判した記事を読んで、
個人的に感じたことを少し。

記事を読む前に、
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「リーグ順位は選手年俸の総額でほぼ決まる。短かい期間ではその相関関係は70%に落ちるが、長い期間ではその相関関係は89~93%ぐらいある。従って、チームの順位は選手年俸で決まるのだから、監督はいてもいなくてもそれほど変わらない。選手年俸から予想できるものより上の成績をつねにあげられる監督は1割程度しかいない。

だから、監督の試合解釈を聞く必要も無いし、また、メディア担当に喋る事を決められている選手のコメントも聞く意味も無い。サッカージャーナリストがやるべきなのは、何が勝敗を分けたかを、きちんとデータで示すこと。サッカージャーナリズムには選手や監督のつまらない発言は必要なく、試合を理解するにはデータがあればいい。

もちろん、データと言っても、各選手のパスやタックルの回数、あるいは1試合に何キロ走っているかなどの数字には意味が無い。重要なのは、最も危険なCKはニアポストに向けてカーブしてくるものだ、という事や、GKを評価する数字は、ペナルティエリア内から打たれたシュートをセーブした率だ、というもので、ジャーナリストもそういうデータを重視すべきだ。」


そこに書かれていた事を要約するとこんな感じですね。まず1つ最初に思う事は、リーグ順位は選手年俸の総額でほぼ決まる、というのは、正確なデータを取らなくても、ほとんどの人が既に気付いている事であり、むしろ当り前で、もしそうじゃなかったら、その方が問題が大きい、という事ですね。

そして、この理屈が矛盾しているのは、じゃあ、実力の無い選手に高額の年俸を与えたら、そのチームの順位は上位に行くのか? という事ですね。もし、リーグ順位は選手年俸の総額でほぼ決まる、という事であるならば、そうじゃなくてはおかしいですよね。

つまり、リーグ順位は選手年俸の総額でほぼ決まる、というのは、実力のある選手には高い年俸を払っているのだから、そういう選手が1人でも多くいるクラブが上位に行く、という事を結果として、その要因と結果の順番を逆に示しているだけであり、要するに、要因と結果を取り違えている、という事ですね。

実力がある→年俸が高くなる。実力がある選手が多い=年俸の総額が高くなる→リーグ順位が高くなる。これが正常なベクトル。しかしそれを、年俸が高い→実力がある。リーグ順位が高い→年俸の総額が高い=実力がある選手が多い。という感じに逆のベクトルで示しているだけであって、それは結果論としては同じであっても、要因論としては間違っている、という事になりますよね。

だからこそ、結果論として、リーグ順位は選手年俸の総額でほぼ決まる、という事は正しいと言えますが、要因論から考えれば、そんなのは当り前の事であって、実力がある→年俸が高くなる、もしそうじゃなかったら、その方が問題が大きい、という事ですね。

つまり、なんでみんながそこに着目しないのかと言えば、それは当り前の事なので、そこよりも、その当り前の事から外れた、残りの7%~30%、選手年俸から予想できるものより上の成績をつねにあげられる1割の監督、そこに興味があるからですよね。

従って、ジャーナリストというのは、70%~93%の当り前の事を書いても意味が無くて、そんな誰もが知り得ている事をみんなの前に示しても価値は無くて、そうじゃないところ、誰もがあまり知り得ていない事を探ってみんなの前に示すから価値ある、という事ですよね。

では、監督の試合解釈を聞く必要も無いし、また、メディア担当に喋る事を決められている選手のコメントも聞く意味がないのか? という事に関して言うと、確かに、くだらない、もしくは、同じ事を何度も聞いて同じコメントを聞く事に意味はありませんが、しかしそれは、聞き手の問題ですよね。

例えば今回のなでしこジャパン。彼氏はいるんですか? 結婚したいですか? こんな質問はまさにくだらない。更にはそれを、一般の人が聞きたがっている、未来のなでしこが聞きたがっている、として答えさせようとする卑劣さも感じられた。また、PK戦の前に笑っていたのはなぜですか? なでしこをまとめた秘訣はなんですか? こういう何度も何度も聞いている質問を更に何回も何回も聞いても意味が無い。他に聞く事はたくさんある。

なぜ澤をボランチにしたのか? とか、なぜスウェーデン戦の先発は丸山ではなく川澄だったのか? とか、イングランド戦で学んだ具体的な事とは何だったのか? とか、選手個人の事にしても、どういう想いでサッカーを続けてきたのか? とか、今までで一番辛かった事は何だったのか? とか、今大会で得た収穫と課題は何だったのか? とか、1戦1戦、1人1人の選手が、何を考えてプレーしていたのか? とか、たくさんありますよね。

つまり、監督や選手にコメントを求める事、その言葉を求める事自体には大きな意味も価値もあって、問題は、何を聞き出すのか、もしくは、どうやって価値のあるコメントを聞き出すのか、という事ですよね。更には、監督も選手もなかなか本心は語らないと思いますが、いかにして聞き出した事から真実を導き出すのか、という考察が重要、という事ですよね。

そしてそういう事というのは、数字というデータには現われない部分もありますし、また、数字というデータから導き出される答えとは真逆の真実を示す事もあるので、必ずしもデータという数字だけでは全てを理解できないと思っています。むしろ、データや数字の至上主義というのは、誤った答えを導く危険性がある、そのように思っています。

最も危険なCKはニアポストに向けてカーブしてくるものだ。しかしそれは味方と相手にどのような選手がいるのかにもよるし、力関係とか、相手の守り方によっても異なってくるので、仮に統計的にそうであったとしても、それは参考程度にしかならないですよね。問題は、その統計学的なセオリーを踏まえて、そこにどのようなアイデアを加えるのか、という事ですよね。

GKを評価する数字はペナルティエリア内から打たれたシュートをセーブした率だ。これも、味方のDFの守備の上手さとか、相手のPA内でのプレーやシュートの上手さとか、そういう事もありますし、また、GKにはセービング以外にも様々な能力が必要で、その総合的なものがGKの評価となるので、ペナルティエリア内から打たれたシュートをセーブした率、というのは、GKの1つの能力を評価したものにすぎない、という事が言えると思います。

と言う事で、その記事の趣旨として、いい加減な事は書くな、ジャーナリストを含めたメディアはもっと意味や価値のある事を聞き出せ、という事には大いに賛同できますが、しかし、だからと言って、何でもデータから答えを導き出せ、データという数字から導き出されたものが真実だ、というのは違うと思いますし、また、監督や選手からコメントを聞きだしても意味がない、というのも違うと思っています。

確かに、数字というデータを活用する事は重要で、それを読み解く力というのは重要ですが、あくまでも数字は1つの側面から見た客観的な1つの事実しか伝えていなくて、それは真実とは違うものなので、そこを誤認してはいけないのではないかなと思います。特に、要因と結果、という事を真逆に認識してしまう、という事は多いし、また、1つの事実が全ての事実と認識してしまう事も多いので、そこには大きな注意が必要であると思っています。




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【2011/07/27 11:45】 | ショートコラム | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
今回も非常に興味深いエントリーをありがとうございます。

私も統計学、集合知の研究をしています。
トトロさんの仰るとおりで、統計学とは現実の傾向を示し、そこから知見を得るのに有効な手段と考えています。

今回の例で言えば、「リーグ順位」と「選手年俸の総額」には明確な相関があり、それは1つの事実だと思います。
しかし、重要なのは、なぜ、「リーグ順位」と「選手年俸の総額」に相関関係があるのか?ということだと思います。
その1つの理由として、judeさんがエントリーでも述べているように、「良い選手=年俸高」だと思います。

実力の無い選手の年俸を上げたら、リーグ順位は上がるのか?
2010W杯において、選手の年俸総額が高いと思われる、フランス代表やイタリア代表はなぜ、結果を出せなかったのか?

このように反例が複数考えられる場合、「年俸を高いチームがリーグ順位が高くなるから、監督や選手の戦術的な意見は無視して良い」という考察はちょっと違うなぁと思いました。
【2011/07/30 23:19】 URL | 通りすがりのサポーター #X.Av9vec[ 編集] | page top↑
いつもブログ楽しく読ませてもらっています。統計は客観的でこそあれ、必ずしも真実を伝えてはいないという意見は、とても正当な意見だと思います。
客観的な統計を扱うにしても、どの統計を用いるのか、選んだ統計から何を読み取るのか、という作業にはやはり主観が必要で、本当に客観的な作業だけでは、決して真実を読み取れない。統計が示すのはあくまで傾向であって、その傾向をただ実行するだけではチームは勝てないし、観衆もその傾向から全ての仕組みを理解することはできない。
また、インタビューと統計は、どちらも不完全な情報にすぎず、質的に異なるものであるため、どちらの方がより真実に近いというわけでもない。結局、真実に近づけるかは読み取り方次第なのだと思います。自分は、ジャーナルがデータを用いた考察をもっとするべきだとは思いますが、それで勝敗の全てを考察できるような例の記事の言い方には賛同できないです。
【2011/07/27 22:11】 URL | トトロ #-[ 編集] | page top↑
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