中田英寿がより詳しく思いを語ったインタビュー番組がテレビ朝日で放送されました。
まず初めに思ったことは、
「素直に感情が表現できない、29歳等身大の若者の苦悩」 というものが彼にはあったのだということ。前にも記したように、本来、彼は「語る」ことが好きな選手で、素直で純朴な青年選手であった。しかし、彼に圧し掛かるプレッシャーやマスコミでのプライベートにまでフォーカスの手がかかる状況に、彼は殻に閉じこもってしまったのだと感じた。 そういう彼のことを考えれば、同情という、こみ上げる感情もあるけれども、やはり感情に流されては真実を見失うので、ここでも冷静に彼の語ったことを分析してみようと思う。 まず初戦オーストラリア戦。ここでは彼のジーコ采配・指導に対する批判があったように思う。 ○「マークを決めない守備だったが、マークを決めた方が楽だった」 ○「後半15~20分、日本のFWは疲れていたので、そこは交代すべきだと思った。言ってみればそこが勝負の分岐点だった」 ○「正直、なぜあそこで伸二(小野)なのかと疑問を感じた」 ○「すでにあの時点で、自分(ヒデ)は守備に走り回るにはもう疲れていたので、守備は伸二にまかせて、自分は攻撃に行った。しかし、思った以上に伸二が攻撃に出てきた。あそこで皆の意識が揃っていなかった」 ○「もちろん、今までジーコの考えに疑問を持つこともあった」 これがオーストラリア戦についてヒデが語ったこと。私にとって、そのほとんどは賛同できるものだった。彼がピッチで感じていたことと、我々のようなサッカー人がピッチ外で感じていたことは、同じだったことがわかる。やはりヒデも語るように、そして私も前述したように、 「自由を重んじるジーコの存在は、まだ日本には早過ぎた」 のだろう。「まだ日本にはトルシエのように全てをオーダーするタイプのスタイルの方がやりやすかった」とヒデが語ったことは、誤魔化しようのない日本選手の現状だと思う。まだ「理想」のサッカーを追うには選手の実力が足りなかったのだろう。そしてジーコには卓越した戦術論やシステム論がなかったので、途中から方向転換することもできなかった。もしそのことにジーコ自身も気がついていたとしても・・・。 次いでクロアチア戦。今度は日本選手に対する批判と言うか苦言がメインだった。 ○「パスのあと動き出しがない」 ○「後方でのパス回しが単調で効果的ではない。後方でのパス回しは、相手の頭を疲れさせるもの」 ○「宮本などDF陣のポジショニングが悪い」 ○「アレックスの守備でのアタック、相手との間合いを詰める動きが甘い」 ○「相手のボールを相手の前でカットする、つまり相手のボールを奪いにいくような守備が日本は圧倒的に少ない」 これが彼の分析だった。確かにこれについては間違いないだろう。彼が指摘する通りだと思う。 しかし、彼自身もボランチとして守備を担う大事な一員だったということはどこにいってしまったのだろうか?どうも彼の発言を聴いていると、彼自身は、 「自分はボランチではない、守備が自分の役割ではない」 と思っていたような節があるように思えてならない。ジーコがヒデに要求したことは何だったのだろうか?もしかして「ボランチとしてのヒデの役割」についても個人の裁量に任せていたというのだろうか?それならばあまりにも無謀としか言いようがない。 また、繰り返しになるが、DFラインを低く保つか高く保つかについて、ヒデと宮本の間に対立があったことについても記したいと思う。ヒデは、 「失点を減らす意味でもラインを高く保つべきだ」 と主張し、宮本は、 「DFラインを高く保つか低く保つかは状況次第で、常に高く保つことが必ずしも良いとは思っていない」 と主張していたようだ。そして、今でもヒデは宮本の主張に納得できてないらしい。 すでに別日の記事で述べているが、もう一度、このことについて私見を記しておきたい。 私は宮本の意見に賛成である。(もちろん、宮本自身が「ラインの上下の的確な判断」ができていたかどうかは別問題である。言ってしまえば出来てないのだが・・・。)それは、やはり状況や時間帯、流れ、そういうものがサッカーには必ずあり、場合によっては自陣深く守ることも必要だからだ。ヒデが主張するように常にDFラインを高く保っていることは理想だが、現実は100%自分たちの思い描いているようにはいかない。常にイニシアティブをとれればいいが、相手にイニシアティブとられたならば、一旦退いて守り反撃の機会をうかがうことも勝負の兵法と言える。 さらに、DFがDFラインを高く保てるかどうかは、DF自身の問題というよりも、MFやFWがいかにボールキープできるかにかかっていると私は思っています。 つまり、このヒデと宮本の「DFライン論争」は、お互いに責任を擦り付け合っているだけにすぎなのではないかと思う。宮本は「攻撃の選手が中盤を支配してくれればDFラインを高く保つことができる」と主張し、ヒデは「DFラインを高く保ってくれれば中盤を支配できる」と主張しているのだと私は思う。もうこうなってしまっては、どちらが正しいとかの問題ではなく、 「どちらかに意思を統一する」 ということが大事なのではないだろうか。ではそれは誰がやるのか?それは監督であったジーコなのではないだろうか。つまりはヒデも宮本もジーコの犠牲者だったと言うことになる。 今回のインタビューを聴いて、やはりまだヒデは選手を辞めるべきではない、という認識を強くした。彼にはまだ現役選手としてやるべきことがあると思う。 さて、話は変って、今日行なわれたオールスターについても少し。今回注目だったのは、内田、小林大吾、藤本淳吾、という若手選手の活躍。中澤のFKも良かったし(笑)、バレーの2得点も良かったですけどね(笑) 彼らには今後も注目していきたい。内田は人材不足の右サイドの救世主になるかもしれないし、小林大吾と藤本淳吾には、中村、小野、小笠原といった選手を脅かし追い越す存在になってほしい。しかし、そこに、今野、阿部、松井、長谷部、という存在もいて、今後も「中盤大国日本」は健在でしょうか・・・・?
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ディフェンスラインは上げるのがよいのがサッカーの基本。トルシエの考えからさらに宮本独自のディフェンス論になりましたが、疑問が多いです。
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